|||: My Sweet Home :|||
夫婦間のセックス/セックスレス。アトピーの自分と息子。ごく普通の30代核家族を夫の立場で考える。
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過去の過ち その1
逃がした魚は大きい、と言います。
片や、
釣った魚にやる餌はない、とも言います。

では、
釣った魚に餌をやらずにいて、
逃がしてしまったら?
20代の頃の、若気の至り。

やろうと思えば何でもできる、そういう根拠のない自信が、自分の愛すべき全てのものをことごとく壊していった、

俺が最も大バカ野郎だった頃の、
本当にあった恋の話です。

---

その女性(以下H)とは8年間付き合い、最後の2年間は同棲していました。

肌の綺麗な人で、顔も確実に平均以上、身体が170cmもあり、スタイルはというとこれはもうファッションモデルとタメを張る完成度でした。

付き合い始めてからいくらも経たない内にお父様は亡くなってしまいましたが、お母様やお姉様のご一家にはお会いして、一緒に食事をしたりもしました。

結婚する意志があるのかどうか、もう当時ですら60歳を越えていらしたお母様にそれとなく聞かれ、肯定したことも覚えています。

この女性(ヒト)は本当に良い人でした。
 もったいないくらいの。
ましてや当時の俺には、「豚に真珠」そのものでした。

とても大人しい女性で、めったに大声を出したりすることの無い人でした。その外観と相まって、お人形さんのような女性だったのです。それも最近流行のロリータものではなく、博多人形のような大人の女性でした。

歳は俺よりも3つ上。
悪いことに、若造の浅はかな征服欲をかき立てるにはちょうど良い条件が揃っていたのです。

そんな彼女に乱れた声を上げさせ、初めて絶頂を教えたのは俺でした。
俺はそれで、彼女の全てを手に入れたと勘違いをし、すっかり有頂天になっていました。

出逢い、付き合い始めたのは、長期バイトで訪れた避暑地でしたが、夏も終わり、お互い自宅へ戻ると、それは約800kmも離れていました。

彼女は態度が大人しいだけでなく全般的に消極的な性格で、互いの距離が離れたのをきっかけに、自然に別れるものと思っていたようです。いえ、本当は俺の間違いを、最初から見抜いていたのかも知れません。

それでも当時の彼女にとって、俺の性技は少なからず魅力だったのか、それとも、それ以外の何かが俺に少しでもあったのでしょうか。機会を見付けては彼女が上京してきて、逢いました。
いわゆる遠距離恋愛です。

帰り際、深夜バスの乗り場では、いつも泣いていたのを覚えています。
毎回毎回、これが最後、これで終わりだと思っていたようなのです。

彼女の甘い蜜を吸い続けるため、俺の方も果敢にアタックを仕掛けました。既に別の仕事をして稼いでいたバイト代を、ほとんど全て彼女に会うために浪費しました。深夜に車を飛ばし、800kmの道程を、月に一度くらいのペースで通い続けたのです。助手席に花束を乗せ、国道と県道を紡いで。

そんな俺のやり方でも、やがて彼女の心には火が灯りました。俺の住む町に仕事の口を見付け、アパートを借りて移り住んできたのです。そういう、妙に肝の据わったところもある人でした。

でもその頃のおバカな俺は、美しく淫靡なお人形としての彼女を手に入れることにのみ興味を覚え、彼女を落とした達成感に酔っていました。

より良い人間関係を築こうとか、お互いに支え合おうとか、そんな事を露ほども思うことの無かった頃です。

呆れるほどに自信過剰で、自分以外の全ての人をバカにしていました。
そういう俺を知る誰もが、後ろ指を指していることにも気付かずに。

当然、彼女のことも、何かと見下した態度を取りました。

車の運転を教えてやると言っては怒鳴り散らし、
パソコンを教えてやると言っては威張り散らし、
そんな時間が彼女にとって楽しいはずもありません。
それとなく教わることを断る彼女を、
またやる気が無いの低能だのと言っては
散々バカにしました。

同棲し始めて1年も経った頃には、俺はHに触れることも、笑顔を見せることもほとんど無くなっていました。

自分のモノになった、という思い上がりで、Hに対する優しさも思いやりも、失ってしまっていました。

第一、それらは初めから俺の下心が作り出した仮面でしたから、用の無くなったそれをただ外しただけに過ぎません。

一見彼女のためと思えるような言葉も行動も、
実のところ、全ては自己満足のためでした。

それでも、彼女を失いたくない思いだけはありましたが、そう言い出すことは、俺の下らないプライドが許しませんでした。

彼女は俺の薦めで都内に職を探し、とある大手高級レストランチェーンの、ウェイトレス教育係に採用されました。

俺と一緒に暮らすために、バイトでも何でもがむしゃらに働く彼女でしたが、俺は都内の会社勤めの彼女が欲しかったのです。

調理師として働いていたこともある彼女のことです。
ペットに対するような、幼稚な俺の要求でしたが、それを叶えるために逢いたくもない昔の、業界の人脈を頼ったのかも知れません。

彼女の服が変わり、化粧が変わりました。髪型もパリッとして、誰がどう見てもバリバリのキャリアウーマンです。

俺はそんな彼女と居て、段々に自信を失いつつありました。

人より優位に立っていなければ人間関係を築けなかった俺にとって、外観も生活態度も職業も、全てに於いて俺を凌駕し始めた彼女は、一つ屋根の下に住んでいるのに手の届かない存在になりました。

そしてそのことが、俺には例えようもなく疎ましかったのです。

俺は何度と無く浮気しました。

浮気、という言葉に違和感があるかも知れませんが、しかし間違いではありません。Hの事は、本気で好きでしたから。

もっとも、俺自身がその事に気付くのはずっと後になってからです。

ある日、彼女は俺の浮気の証拠を見付けました。

それまでにも疑うべき状況はいくらでもあったと思います。でも彼女はそういう事に気付かない振りをしていました。

俺にも、そして恐らく自分自身にも。

でも物証を見付けたことで、彼女の中で何かが切れたのでしょう。

彼女が仕事に出ていたある日、何とはなしに急に思い立って彼女の部屋を覗くとそこここに段ボールが積まれて部屋は閑散としています。

それでもまだ俺は、
自らの過ちを詫びることも、
態度を改めることも、
ましてや心を正すことなど
思い至ることすらできずにいました。

また数日が過ぎました。

その日、俺はたまたま自宅付近で仕事をしていました。

昼前に開放され、たまには自宅で昼食を摂ろうと思ってマンションに戻ると、引っ越しのトラックが俺の部屋の前に横付けされています。俺の借りているマンションの、玄関の扉は開け放たれており、中でせわしなく働く引っ越し業者の姿が見えます。

ピンときて家に上がろうとしたとき、ちょうど玄関口に出てきた彼女と鉢合わせる格好になりました。

予想外の事に戸惑うH。

髪をポニーテールにまとめ、Tシャツの袖をまくって働く彼女を俺は眩しい思いで見つめました。

その姿は、アタマの中が空っぽの俺にはあまりにも美しく凛として見えました。

「ちょっと話がしたい」と俺が言うと、「今度じゃダメ?」と。

引っ越し屋を呼んで作業をしているのです。
当然、長い話になったら困ると彼女は判断したのでしょう。

しかし人に何かを申し入れて断られた経験などほとんど無かった俺はその返事を、拒否と受け取りました。

家には上がらず、黙ってそのまま駅の方へ向かって戻りました。

思えばこの時に引き留めていれば、彼女は出ていくのを止めたのかも知れません。

この期に及んでまでも、
つまらないプライドが邪魔をして、
俺はそう言い出せませんでした。

仕事を終えて自宅に帰ると、彼女の居た部屋はもう、一組の布団とコタツ、ハンガーに掛かった何枚かの服を残して、ガランとした空間になっていました。

それから一週間。

彼女の部屋は覗く度に少しずつ服が減り、新しい住処での生活も着々と準備されているようでした。

ある朝、玄関で彼女が俺を待っていました。
途中まで一緒に行こう、と言うのです。

暖かな春の初めの、踊るような風の日でした。

わざと早足で歩く俺に、彼女は小走りに付いてきます。駅までの道すがら、彼女は俺に新しいアパートの場所を教え、その当時に二人ではまっていたゲーム機をもらっても良いかと聞きました。

その機械を持っていけば、俺がたまには遊びに行くと思ってのことでしょう。彼女の移り住む先は、今のマンションから歩いても5分と掛からないところでした。

「いいよ」と俺は答えました。

次に電話をしても良いかと聞かれました。

拒否。

今後一切逢わない、
電話もしてくれるな、との言葉を、
肩越しに彼女に投げつけました。

ちっぽけな俺は、自分を置いて出ていく彼女に無性に腹を立てていました。彼女との縁をこちらから絶ち切ろることで、自分のつまらないプライドを満足させようとしていました。

と同時に、最後の最後まで意地悪を続けることで、彼女の当然の警告行為を逆恨みし、仕返しをしようとしたのです。

その原因が何なのか、彼女は本当はどうしたいのか、
俺の本当の気持ちはどうなのか、考えることも忘れて。

---

それから1年が過ぎた頃でしょうか、
一度だけ、彼女から電話がありました。

男性の声で架かってきて、俺の声を聞くとすぐに彼女が代わりました。駅前のレンタルビデオ屋に、俺の見たがっていた映画が入っている、と久し振りに聞く彼女の声はそう、俺に告げました。

俺が一緒に住んでいる女性が出たら俺を困らせるからとそう考えて誰かにコールを頼んだのだと思います。

俺と一緒にいた頃、彼女が自分でビデオを借りたりすることはありませんでしたから、ひょっとするとその店に勤めていたのかも知れません。

いや、きっとそうなのでしょう。電話を架けてきたのも、店のバイト仲間の誰かに頭を下げて頼んだか。気の小さい彼女のことです、きっと悩み抜いた末に振り絞った勇気であったに違いありません。

彼女は田舎の名の知れた家の出身です。
父親は亡くなる直前まで市長を務めており、母親は市内で飲食店を営んでいました。冗談ではなく、地元の名士が息子の嫁に迎えたいとか、店を一軒やるから愛人になれとか、そんな話が絶えることのない女性だったのです。

恐らく、明日にでも結婚しろという実家からの矢のような催促でお見合いの日取りを決めていたのだと思います。それに合わせて、店を辞め、アパートを引き払う日も決めて。

これで数日中に俺が店に出向き、万に一つの確率ででも縒りを戻すことが出来たら、今一度俺に結婚の意志を確認して、いや、彼女の方からプロポーズして、見合いを取りやめさせるつもりだったのかも知れません。

本当のところはもう
今となっては分かりません。

---

俺の住む町にまた春が来る頃、
彼女の気配は風にさらわれるように薄れ、
いつしかすっかり無くなってしまいました。
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